牛肉|食品別貿易情報

戦後、主要穀物の生産量の回復と並行して、肉の需要も高まりました。最初は国内生産がメインでしたが、1991年に関税化されると輸入量が急激に増加しました。その後、2004年のアメリカの狂牛病発生に伴い減少しましたが、輸入再開後は徐々に輸入量が戻り、2010年には狂牛病発生前の状況と同じくらいの水準まで輸入量が回復しました。

1.牛肉の戦後史

戦前の牛肉生産量は枝肉ベースで5万~7万トン程度でした。戦争中、戦争直後は食糧難のため2万~3万トン位の生産量となりました。食糧不足が解消されると牛肉の生産量も回復していきました。戦後、肉の消費量増加により国内生産量は順調に伸び続け1980年台には現在の生産量と同じ位になっています。また、輸入量については1995年のウルグアイ・ラウンド交渉をきっかけに、1965年以降、増え始めた輸入量が急拡大、狂牛病の影響があり、ピークより減ってはいるものの国内生産量を上回る量が輸入されています。

【出典】食料需要に関する基礎統計・食料需給表

国内生産量、輸入量ともに枝肉ベースに換算した数値です。

牛肉の戦後年表

1945年
(終戦直後)物価統制令の対象品となる。
1949年
物価統制令の対象品から除外される。
1964年
外貨割当から数量割当制度への移行により、この年以降、輸入枠を順次拡大
1991年
輸入枠(前年度39.4万トン、税率25%)を撤廃し、関税化(税率70%)し、段階的に引き下げ
1994年
関税率50%
1995年
ウルグアイ・ラウンド交渉により関税率48.1%、以降段階的に38.5%まで引き下げ
2000年
関税率が38.5%まで下がる
2019年
TPP11参加国及びアメリカからの輸入は関税率26.6%となる。(2033年までに段階的に9%まで引き下げ)

2.牛肉の国内生産量と輸出入状況

牛肉の直近30年間の国内生産と輸入先

1988年から2018年の30年間の牛肉輸入量の推移を調べました。1991年(平成3年)に輸入枠が撤廃され関税化となったことがきっかけに牛肉の輸入量が急増した後も関税の減少に伴い輸入量は伸びていきました。主な輸入先はオーストラリアとアメリカです。ただし、2003年にアメリカでBSEの発生が判明した翌年の2004年から2005年にかけてアメリカからの牛肉輸入はほぼゼロになりました。その間はオーストラリア産牛肉にほぼ依存する形になりました。2006年からアメリカ産牛肉の輸入が再開になってから移行は徐々にアメリカ産牛肉の輸入割合が増えていき2018年の段階ではほぼBSE発生以前の状態に戻っています。

【出典】食料需給表(国内生産,輸入 1988-2018年)・財務省貿易統計(各国からの輸入量、概況品コード「牛肉」00301(1988-2018年)

牛肉の海外への輸出状況(2018年)

和牛を始めとする銘柄牛は海外に輸出されています。その量は国内生産量と比較するとわずかですが、単価は5000~20000円/kg前後と高単価なため、海外の高級料理店や富裕層へ向けたものと推測できます。

輸出先輸出量(トン)割合
カンボジア78622%
香港70920%
台湾62818%
アメリカ42112%
シンガポール2477%
タイ2166%
その他55215%
輸出量合計3560100%

アメリカ以外はアジア圏向けがほとんどです。輸出先としてカンボジアが1位になっていますが、実質、カンボジア経由で中国へ入っているという専らの噂です。ただし、ここ2年間、話し合いの場が持たれている日中ハイレベル経済対話において、日・中動物衛生及び検疫協定について、実質合意に至ったようです。これにより、日本産牛肉などの畜産物の対中輸出解禁へ進みつつあります。

3.世界の牛肉の生産状況・貿易状況

牛肉の世界(主要国抜粋)における生産量、輸出量、輸入量について、まとめました。

【出典】USDA Foreign Agricultural Service PS&D(2019年)

生産量が多く輸出もするアメリカやブラジル、生産量が多いがさらに輸入もする中国

世界全体の牛肉生産量は約6570万トンにもなり、そのうちの約40%をアメリカ、ブラジル、中国で占めます。アメリカは輸出入ともに貿易取引が盛ん、ブラジルは国内生産の余剰分を専ら輸出、中国は自国生産だけでは賄いきれず、他国からも牛肉を輸入している点が特徴です。

輸出量が多いのはオーストラリアとブラジル

輸出量が多いのはオーストラリアとブラジル、次いでアメリカです。オーストラリアは生産量の半分近くを輸出しています。なお、ブラジルから日本への牛肉の輸入は加熱処理をしたもの以外は一切認められていません。ちなみに輸出量が生産量の半分近くを占める国は南米ではウルグアイ、ヨーロッパではポーランド,オセアニアではニュージーランドとなります。これらの国の牛肉もわずかながら日本へ輸出されています。

輸入量が多いのは中国、アメリカ、そして日本

2016年においては世界全体の牛肉輸入量は約680万トンで生産量の約8分の1が貿易取引されていることになります。日本の牛肉輸入量はそのうちの50万トンで世界全体の7%程度を占めています。日本は世界3位の牛肉輸入国となっています。

4.その他

TPP協定交渉の結果とその影響

交渉結果 牛肉の関税は将来的に9%まで下がることが確定

TPP協定交渉の結果、関税は段階的に削減、2033年度までに関税9%まで削減することで合意しました。なお、削減途中も輸入量の急増に備え、年間輸入量が一定量を超えるタイミングでのセーフガード措置は講じられます。(初年度は年間59万トン、2年目以降は年間2%ずつ上昇)

年度関税率備考
暫定TPP11日豪EPAセーフガード発動時
200338.5%--50%-
2015
(01/15)
38.5%-32.5%(冷蔵)
30.5%(冷凍)
38.5%(豪)、50%(米)日豪EPA発効日
201738.5%-29.9%(冷蔵)
27.2%(冷凍)
38.5%(豪)、50%(米)-
201838.5%-29.3%(冷蔵)
26.9%(冷凍)
38.5%(豪)、50%(米)-
2018
(12/30)
38.5%27.5%(冷蔵)
26.9%(冷凍)
29.3%(冷蔵)
26.9%(冷凍)
38.5%(豪)、50%(米)TPP11発効日
201938.5%26.6%28.8%(冷蔵)
26.7%(冷凍)
38.5%(豪)、50%(米)-
2027
(予定)
38.5%20%24.1%(冷蔵)
23.2%(冷凍)
30%-
2033
(予定)
38.5%9%23.5%(冷蔵)
19.5%(冷凍)
18%-

日米貿易交渉もTPP同様の条件で合意

アメリカ産牛肉もTPPと同内容で9%まで関税削減し、セーフガード付きで長期の関税削減期間を確保されることになりました。セーフガード発動基準数量は2020年度24.2万トン。以後、TPPの発動基準と同様に増加し、2033年度29.3万トン。2023年度以降については米国とTPP11発効国からの輸入を含むTPP全体の発動基準に移行する方向で協議する予定です。

今後の見通し

見通し① 今後はカナダ、ニュージーランド、メキシコからの輸入が増える可能性あり

動物防疫の法規制によりTPP加盟国において、現状、日本への牛肉輸出が可能な国はオーストラリア以外にはカナダ、メキシコ、チリ、ニュージーランドの4カ国です。〔参考リンク:農産物の品目別の交渉結果に係る動植物検疫の状況カナダ、ニュージーランド、メキシコについては割合は小さいながらも一定の輸入実績があるため今後は徐々にシェアを伸ばしていくことが予想されます。

見通し② 日本産牛肉の市場は縮小、銘柄牛のみ高級品として生き残る

TPP発効によって,一般消費者は普段はより安い輸入牛肉を買うようになります。現状でも小売価格ベースで国産牛は輸入牛の3倍以上の価格です。(小売価格 国産牛肉:839円/100g、輸入牛肉:241円/100g 農畜産業振興機構 牛肉の小売価格、2010年~2018年の平均)和牛を始めとする銘柄牛は高級品の扱いとなり、一般家庭では記念日など特別な日にのみ消費されるようになることが予想できます。そうなると国産牛の消費量は今よりももっと落ち込むことになります。多くの牛肉生産業者は海外の富裕層向けの輸出ビジネスにしか活路を見出さざるえなくなり、販路を開拓できない業者は淘汰される可能性があります。